■■ 解説(5項前段) ■■(»全体表示)
(1)解釈
(1.1)「各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない」
ある請求項において特許を受けようとする発明はその請求項に記載された事項のみによって構成されるものとみなされることである。
【補足1】請求項に記載された事項とは、請求項に記載された用語の意義を解釈することによって特定される事項である。
【補足2】請求項に記載されていない事項は、たとえ明細書や図面に必須の事項として記載されていても、その請求項において特許を受けようとする発明の構成要件であると主張することはできない(»判例1、判例2、判例3、判例4、判例5、判例6、判例7、判例8)。また、請求項に記載された事項は、たとえ明細書や図面に必須の事項として記載されていなくても、その請求項において特許を受けようとする発明の構成要件ではないと主張することもできない(»判例)。ただし、特許を受けようとする発明が物の発明であって請求項にその物(の全体や一部分)の生産方法が記載されている場合(いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレーム(PBPクレーム))は、請求項に記載された生産方法自体は、その請求項において特許を受けようとする発明の構成要件とはならず、生産された物の構造や特性のみが構成要件となる(»判例1、判例2)。なお、プロダクト・バイ・プロセス・クレームについては、特許請求の範囲の記載要件である明確性要件(»本条6項2号)の適否の問題が別途に生じる。
【補足3】請求項に用途が記載されている場合(いわゆる用途発明)は、請求項に記載された用途も特許を受けようとする発明の構成要件となる(»判例1、判例2、判例3)。なお、用途の記載方法には特に制限はない(»判例)。