■■ 解説(1項本文) ■■(»全体表示)
(1)趣旨
(1.1)「事件が特許庁に係属している場合に限り」
事件の蒸し返しを防ぐためである。 【補足】手続をして特許庁に受理されると、適法なものであるか否か(主として方式に違反していないか否か)を点検される(いわゆる方式審査)。そして、違反が発見された場合は、それが補正や補完によって解消できるものであれば、補正の命令(»本条3項、第133条1項・2項)や補完をできる旨の通知(»第38条の2第2項)がされ、補正や補完によって解消できないものであれば、手続は却下される(»第18条の2、第133条の2、第135条)。したがって、手続の補正は、事件が特許庁に係属している間(別途に時期の制限がある場合(»本条1項ただし書)にあっては、その期間内)に自発的にするものと指定期間内に命令に応じてするものに大別される。なお、補正の命令や補完をできる旨の通知に応じて指定期間内に補正や補完をしなければ、手続は却下される(»第18条1項、第38条の2第8項、第133条1項)。 |
(2)解釈
(2.1)「事件が特許庁に係属している場合」
特許庁にとって事件が解決していない場合である。 【補足1】特許庁に受理された手続のすべてが大なり小なり「事件」となるのかは必ずしも明らかではない(「その手続」ではなく「事件」と規定されていることや、審査請求制度の導入前は「事件が審査、審判又は再審に係属している場合」と規定されていたことからすると、特定の手続のみが「事件」となる可能性もある)が、事件には、少なくとも次のものがある。なお、事件と手続の関係を表す語として「事件に係る手続」と「事件に関する手続」があり、前者はすでにされた手続である(»第133条の2第1項)のに対して、後者はこの先にされる手続である(»第21条、特許法施行規則4条の3第3項)という違いがある。 【補足2】特許出願事件は、査定後は審査には係属しなくなるが、特許出願の放棄、取下げ、却下(これらは特許庁への係属を解く手続そのものであるので確定は不要であり、処分取消訴訟によって却下が取り消されると、特許庁に再係属することになる)、拒絶査定や拒絶審決の確定があるまで(»特許庁「方式審査便覧」54.51)や、特許権の設定の登録があるまでは、特許庁には係属し続けることになる。したがって、特許出願の願書の補正は、長期間にわたって自発的な補正が可能となる場合(例えば、拒絶査定がされて拒絶査定不服審判を請求し、さらに拒絶審決がされて審決取消訴訟を提起した場合)があるが、願書に記載した発明者や出願人の補正の内容には厳しい制限がある(»特許庁「方式審査便覧」21.50、同21.52)。 【補足3】審判事件は、審決(却下審決を除く)後は審判には係属しなくなる(»第157条1項)が、審判の請求の取下げや審決の確定があるまで(»第155条1項)は、特許庁には係属し続ける(特許庁にとって解決していない)ことになる。また、却下審決や却下決定があると、直ちに(確定を待たずに)特許庁に係属しなくなる(審決等取消訴訟によって却下審決や却下決定が取り消されると、特許庁に再係属することになる)。 |