■■ はじめに ■■»全体表示

(1)概要

 条は、パリ条約による優先権(パリ条約の同盟国である外国への第一国出願によって生じる優先権)の主張を伴う特許出願について規定したものである。

(2)趣旨

 日本はパリ条約の同盟国だからである

 補足1特許法においては、パリ条約による優先権の主張と証明の手続についてのみ規定されている。したがって、パリ条約による優先権の内容については、パリ条約の規定が直接に適用されることになる»6条

 補足2パリ条約による優先権は、同盟国の国民(居住者を含む)が同盟国の1つ(通常は自国)に最初に出願(第一国出願)をしてから他の同盟国(通常は外国)に出願(第二国出願)をする場合に、第一国出願をしてから第二国出願をするまでの間(この間に第二国出願のための翻訳文の作成その他の準備をする)に不利益(例えば、新規性の喪失、先願の発生)を受けないために設けられたものであり、その主な内容は、次のとおりである。
 @同盟国の1つに第一国出願(出願の日付の確定されたものであれば足り、その後の結果のいかんは問わない)をした者やその承継人は、その発明(出願書類の全体によって明らかにされていれば足り、請求の範囲に記載されている必要はない)について、他の同盟国において優先権を有する»パリ条約4条(1)〜(3・H
 A優先権を有する発明について優先期間内に他の同盟国にした第二国出願(複数の同盟国に第二国出願をすることができる)は、第一国出願と第二国出願の間の自己や他人の行為(例えば、発明の公開、他人による出願)による不利な取扱いを受けず、また、その間の他人の行為は、その他人に何らの権利も生じさせない»パリ条約4条
 B優先期間は、第一国出願日(いわゆる優先日)から2月であり、期間の初日は参入せず、期間の末日が休業日であれば最初の就業日まで延長される»パリ条約4条(1)〜(3))
 C第一国出願についてその公開前であって第二国出願をする前に取下げ、放棄、拒絶があった場合に同一の発明について同一の同盟国に再び出願をすると、その出願が新たに第一国出願とみなされ、もとの第一国出願は第二国出願において優先権の主張の基礎とすることができなくなる»パリ条約4条(4))
 D第二国出願において優先権を主張するためには、その同盟国が定める期間内に第一国出願の日付と国名を明示した申立てをしなければならない»パリ条約4条(1))
 E同盟国は、優先権の申立てをする者に対して、第一国出願の受理官庁が交付する出願の日付を証明する書面を添付した出願書類の認証謄本の提出を要求することができ、提出されない場合に優先権を喪失させることができる»パリ条約4条(3)・(4))
 F第一国出願が特許出願である場合に第二国出願が実用新案登録出願であっても優先権を主張することができ、また、第一国出願が実用新案登録出願である場合に第二国出願が特許出願であっても優先権を主張することができる»パリ条約4条(2))
 G第二国出願においては、複数の優先権を主張すること(いわゆる複合優先)や新規事項を含むこと(いわゆる部分優先)ができ、新規事項によって追加された発明については、その出願がその発明にとっての第一国出願であれば、優先権が生じる»パリ条約4条