大阪地裁(平成元年4月24日)“製砂機のハンマー事件”は、「被告は、・・・・部品にすぎない打撃板だけについて実施権を設定することはできない、打撃板についての実施料・・・・ということ自体考えられない・・・・旨主張する。確かに、一般に登録実用新案についての実施権の設定といえば、当該考案の構成全体について実施権を設定することをいい、その構成の一部についてのみ実施を許諾するというのは、右の一般にいう実施権の設定には当たらないものと解される。しかしながら、・・・・いわゆる間接侵害の成立を認める以上、実用新案権者である原告が、侵害者に対し、差止請求権と損害賠償請求権を行使できる立場に立つことは、明らかである。そして、このような立場に立つ原告が、侵害者との間で間接侵害を構成する部品の製造、販売について間接侵害を理由とする差止請求権及び損害賠償請求権を行使しないことを合意することは当然可能であるから、間接侵害を構成する部品を製造、販売しようとする者との間で、対価を得てこれについて右差止請求権や損害賠償請求権を行使しない旨合意すること、換言すれば対価(許諾料)を徴して右部品の製造、販売を許諾することも、不可能ではない・・・・。そして、このような間接侵害を構成する部品の製造、販売は、法律上、実用新案権者である原告の許諾なしには適法に実行できないものであるから、右許諾料を支払わずに、間接侵害を構成する部品を製造、販売した者は、法律上の原因なく右許諾料相当額を利得し、これにより、実用新案権者たる原告は同額の損失を被ったものとして、その返還を請求できると解するのが相当である」と述べている。 |