東京高裁(平成2年7月19日)塩化ビニルの水性懸濁重合法事件”は、「特許出願の取下げについて検討すると、特許出願は、特許権の付与(特許査定)を求めて特許庁長官に対し願書を提出する行為であり、特許出願の取下げは、その要求を撤回する行為である。そして、法律行為その他法律要件の効力は、それがなされたときから以前にさかのぼらないのが原則であり、遡及効が認められるのは、特に法律に規定のある場合に限られるから、特許出願の取下げについても、その効力は法律に特別の規定のない限り、取下げがなされたときから将来に向かって生じるというべきであって、このことは出願人が自らの積極的意思により出願を取り下げるか、法律の擬制によって取り下げとみなされるかによって差異はない」、「特許法第29条の2・・・・に規定する『当該特許出願の日前の他の特許出願』が当該特許出願後に出願公開されたときは、その後に右出願公開された出願が取り下げられたとしても、その取下げの効力が出願公開前にさかのぼり同項の適用が排除されることにはならないというべきである」と述べている。 |