最高裁(平成3年3月8日)“トリグリセリドの測定法事件原審が確定した・・・事実関係によれば、本願発明の特許請求の範囲の記載には、トリグリセリドを酵素的に鹸化する際に使用するリパーゼについてこれを限定する旨の記載はなく、・・・特段の事情も認められないから、本願発明の特許請求の範囲に記載のリパーゼがaリパーゼに限定されるものであると解することはできない。原審は、・・・技術的に裏付けられているのは、aリパーゼを使用するものだけであり、本願明細書に記載された実施例もaリパーゼを使用したものだけが示されていると認定しているが、本願発明の測定法の技術分野において、aリパーゼ以外のリパーゼはおよそ用いられるものでないことが当業者の一般的な技術常識になっているとはいえないから、明細書の発明の詳細な説明で技術的に裏付けられているのがaリパーゼを使用するものだけであるとか、実施例がaリパーゼを使用するものだけであることのみから、特許請求の範囲に記載されたリパーゼをaリパーゼと限定して解することはできないというべきである」、そうすると、原審の確定した・・・事実関係から、本願発明の特許請求の範囲の記載中にあるリパーゼはaリパーゼを意味するものであるとし、本願発明が採用した酵素はaリパーゼに限定されるものであると解した原審の判断には、特許出願に係る発明の進歩性の要件の有無を審理する前提としてされるべき発明の要旨認定に関する法令の解釈適用を誤った違法があるというべきであり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである」と述べている。

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