東京地裁(平成6年7月22日)“自動車の車輪事件”は、「原告は、被告ジャップオートの輸入、販売についても、別個に実施料相当額を算定し、被告ラシメックスの販売についての実施料相当額と合算して請求している。しかしながら、特許発明の特定の実施品が製造業者又は輸入業者、卸売業者、小売業者と順次転々流通する場合においては、特許権者は各段階の販売者のうちのいずれか特定の者(多くの場合製造業者又は輸入業者)とのみ実施契約を締結して実施料を取得し、それ以降の販売者には特許権の効力が及ばない(用尽)ものとなり、1個の実施品の流通から1回だけ実施料を取得できるのが通常であるから、共同不法行為の場合の損害額も右のような通常の場合において特許権者が取得し得る実施料の額にとどまると解するのが相当である。そうすると、被告ラシメックスについて通常受けるべき金銭の額として前記のとおり算出した額は、通常、特許権者である原告が本件特許権の実施品の転々流通によって取得し得る通常の実施料額に達しているものと認められるから、被告ジャップオートが特定のイ号製品、ロ号製品を輸入し、被告ラシメックスに譲渡したことについての実施料相当額は、被告ラシメックスの当該イ号製品、ロ号製品の販売についての実施料相当額によって評価し尽くされているものというべきであり、被告ラシメックスの実施料相当額に加えて被告ジャップオートの実施料相当額を加算するのは相当でない」と述べている。 |