大阪地裁(平成11年10月7日)“掴み機事件”は、「先使用の事実による通常実施権の範囲は、ロ号物件の製造、販売に及ぶかについて問題となるので、これを検討するに、先使用に基づく通常実施権の範囲は、先使用権者が現に日本国内において実施又は実施の準備をしていた実施形式に限定されるものではなく、その実施形式に具現されている技術的思想と同一性を失わない範囲内において変更した実施形式にも及ぶと解すべきところ(最高裁判所昭和61年10月3日判決・・・・参照)、ロ号物件は、イ号物件(サイト注:先使用権者が現に日本国内において実施又は実施の準備をしていた実施形式)と比較して、本件考案の構成要件とは関わりのない旋回装置を装着した以外はイ号物件と同一の構造を有しており、本件考案の実施という観点からみた場合には、技術的思想としての同一性を失わせるものではないというべきであるから、ロ号物件の製造、販売も、右先使用による通常実施権の実施の範囲内であると認められる」、「よって、被告のイ号物件、ロ号物件・・・・の製造、販売行為は、いずれも、先使用に基づく通常実施権の行使として、本件実用新案権を侵害するものではない」と述べている。 |