京都地裁(平成11年9月9日)“サーマルヘッド事件”は、「特許法102条2項は、損害額を推定するものであって損害の発生を推定するものではないから、同条項の適用を受けるためには、特許権者は特許発明を実施していること、侵害者の実施により損害を被ったこと及び侵害者がその実施によって得た利益を主張立証すべきことになる。ただ、同条項は、侵害行為がなければ侵害者が右行為によって得た利益額を特許権者が特許権の実施によって得たはずであるという経験則に立脚するものであることから、『特許権者による特許権の実施』は、右経験則の適用の前提となる程度の具体的事実の存在をもって足り(特許権者による特許発明の類似品の製造販売、当該特許発明の実施品を製造販売することが可能な施設の保有など)、厳密に当該特許発明そのものの実施に限定するべきものではない」、「証拠・・・・及び弁論の全趣旨によれば、始期は不明であるが、原告は本件特許発明の実施品や本件特許発明の類似品である原出願にかかる発明の実施品を製造販売しているとともに、原告主張の被告物件の製造販売期間を通じて本件特許発明の製造販売が可能な施設を保有していることが認められるから、本件において同条項を適用するのに支障はない」と述べている。 |