最高裁(平成2年1月7日)“クロム酸鉛顔料事件「特許法16条は、特許を無効とする審判の請求(以下『無効審判請求』という)について確定審決の登録があったときは、同一の事実及び同一の証拠に基づいて無効審判請求をすることはできないと規定するところ、その趣旨は、ある特許につき無効審判請求が成り立たない旨の審決(以下『請求不成立審決』という)が確定し、その旨の登録がされたときは、その登録の後に新たに右無効審判請求におけるのと同一の事実及び同一の証拠に基づく無効審判請求をすることが許されないとするものであり、それを超えて、確定した請求不成立審決の登録により、その時点において既に係属している無効審判請求が不適法となるものと解すべきではない。したがって、甲無効審判請求がされた後にこれと同一の事実及び同一の証拠に基づく乙無効審判請求が成り立たない旨の確定審決の登録がされたとしても、甲無効審判請求が不適法となるものではないと解するのが相当である「仮に、確定した請求不成立審決の登録により、既に係属している同一の事実及び同一の証拠に基づく無効審判請求が不適法になると解するならば、複数の無効審判請求事件が係属している場合において、一部の請求人が請求不成立審決に対する不服申立てをしなかったときは、これにより、他の請求人が自己の固有の利益のため追行してきたそれまでの手続を無に帰せしめ、その利益を失わせることとなり、不合理といわざるを得ない」と述べている。

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