東京地裁(平成2年1月1日)“整腸剤事件被告は、本件出願日である昭和1年2月1日より前から、昭和7年寄託したM588ないしMU588と同一の菌株を培養して得られる芽胞を有効成分とした生菌製剤を、一貫して同一方法で製造し続けていることが認められ、これを覆すに足りる証拠はない。もっとも、昭和8年ころから昭和9年ころまでの被告工場内の培養工程における、いわゆるラフ型菌の発生及びいわゆるスムース型菌の不発生という不測の事故を契機として、遅くとも昭和1年初頭ころまでバクテリオファージKM1耐性菌を製剤に用いたことがあったが、これらは暫定的な措置に過ぎず、昭和0年5月下旬ないし7月上旬に掛けて培養タンクが洗浄されて以後(遅くとも昭和1年初頭以降)は、純粋な感受性菌MU588株を用いて、被告製剤を製造していたのであるから、同事実は、被告が出願日以前から現在まで、同一菌株を培養して製剤を製造、販売しているとの認定に消長を来すものではない。そうすると、・・・・被告は、本件特許権について、先使用に基づく通常実施権を有することになり、原告の被告に対する請求は理由がないことになる」と述べている。

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