東京高裁(平成12年10月11日)“レンズ付きフィルムユニット事件”は、「実用新案法3条の2(サイト注:特許法29条の2に相当)・・・・ただし書は、一般に先願明細書の記載の後願排除効を規定する同条本文の例外であるから、安易に拡張解釈することなく文言どおりに解するのが原則であるところ、同項ただし書は、『当該実用新案登録出願の時にその出願人と当該他の実用新案登録出願又は特許出願の出願人とが同一の者であるときは、』と規定するから、当該他の実用新案登録出願が単独の出願人によってされ、当該実用新案登録出願が共同出願人によってされた場合には、同項ただし書に規定する『同一の者』の要件を満たさないと解するのが、同項ただし書の文理に合致する。また、同項ただし書は、『当該実用新案登録出願の時に』と規定し、後願の出願時を基準として先願と後願の出願人が『同一の者』に当たるかどうかを判断する旨を規定しており、当該他の考案の出願人と当該考案の出願人との実質的な関係を考慮することなく、後願の出願時における当該考案の出願人がだれであるかにより、形式的にその適用の有無が決せられる趣旨の規定であると解される。したがって、先願の当該他の実用新案登録出願が単独の出願人によってされ、後願の当該実用新案登録出願が共同出願人によってされた場合には、その共同出願人の1人が先願の出願人であるときであっても、同項ただし書に規定する『同一の者』の要件を満たさないと解するのが相当である」、「この点について、原告らは、さらに、上記のような場合に、先願出願人でない後願出願人が、共通出願人の子会社である等、共通出願人と極めて密接な関係を有し、かつ、当該技術分野において、共通出願人と共同で、又は共通出願人からの委託を受けて研究開発をしていた等の特段の事情が存在するときは、後願出願人と先願出願人は、上記『同一の者』であるというべきであるとも主張する。しかしながら、上記『同一の者』の要件該当性を判断するに当たって、このような具体的事情の有無まで考慮すべきものとすることは、前記のとおり、法3条の2・・・・ただし書の適用の有無が形式的に決せられるべきであるとする法の趣旨に反する上、極めて多数の出願を迅速に処理すべきことが要請されている特許庁の事務処理上著しい妨げとなり、同項ただし書の適用に関する法的安定性を損なうこととなるから相当でない。また、たとい上記のような特段の事情が存在する場合であっても、後願出願人において同項ただし書の適用を受けようとするならば、その出願までの間に他の後願出願人から実用新案登録を受ける権利の譲渡を受けて単独出願をすることにより登録を受けることが可能となるから、このように解したとしても、不当な結果を招くことはない。したがって、原告らの主張は採用することができない」と述べている。 |