東京高裁(平成2年3月4日)“ロータリ耕耘装置事件本件訂正前の本件特許明細書には、ハンガーロッドが弾圧する対象について明らかに矛盾した記載があることが認められる。・・・・上記矛盾する記載を当業者がどのように理解するかについて検討すると、本件訂正前の本件特許明細書中の実施例を中心とする発明の詳細な説明及び図面には、後部カバーの回動を阻止するためにハンガーロッドで直接耕耘カバーを弾圧するとの具体的構成についての説明はなく、かえって、後部カバーの回動を阻止するためにハンガーロッドで後部カバーを弾圧する具体的構成が明確に記載されているものであり、しかも、後部カバーで土寄せ作業をすると、後部カバーに土面からの多大な反力がかかるものであるところ『耕耘カバーの後端に後部カバーを回動自在に枢支し』たものにおいて、上記土面からの反力を、後部カバーではなく、それと回動自在に枢支された耕耘カバーをハンガーロッドで弾圧することによって押し返すようにする構成が技術的に極めて困難であることは、技術常識に属することと認められる。そうすると、本件訂正前の特許請求の範囲第1項における『該耕耘カバーを弾圧するハンガーロッド』及びそれと同旨の発明の詳細な説明中の記載が『該後部カバーを弾圧するハンガーロッド』の誤記であることは、本件訂正前の本件特許明細書及び図面に接する当業者にとって自明のことと認められる」、「したがって、・・・・本件訂正は認められないとした決定の判断は誤りであり、原告主張の取消事由は理由がある」と述べている。

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