東京高裁(平成12年3月2日)“多層セラミック低温形成方法事件”は、「特許請求の範囲の記載に誤記があるか否かは、特許権者の主観的意図にかかわらず、第三者ないし当業者との関係で客観的に判断されるべきところ、本件請求項2及び3における『触媒添加』が誤って記載されたものであり、それが削除された記載が正しいことが本件明細書に接する当業者にとって客観的かつ一義的に明らかであると認めることはできない。すなわち、・・・・『触媒添加』は、特許請求の範囲である本件請求項2及び3に記載されているものであるが、この記載部分があるからといって本件請求項2及び3全体に明白な文脈上の不明確さや矛盾があるわけではなく、特許請求の範囲に記載された事項を十分な根拠なく誤って記載されたものと解することはできない。・・・・また、本件明細書全体の記載を検討しても、『触媒添加されない水素シルセスキオキサン樹脂』との記載など『触媒添加』を積極的に否定する記載は一切見当たらないところである。・・・・さらに、水素シルセスキオキサン樹脂において、『触媒添加』したものが技術的に存在し得ないことが当業者に明らかであるとか、触媒添加水素シルセスキオキサン樹脂を用いることにより本件発明の実施が技術的に不可能ないし困難であることが当業者に自明であるとする事情も認められない。・・・・以上のように、本件請求項2及び3における『触媒添加』の記載が明らな誤記と解すべき技術的な理由もなく、当業者によりこの記載部分を削除した記載が正しいものと当然に理解されるということはできない」と述べている。 |