大阪地裁(平成13年10月30日)“エアロゾル製剤事件”は、「対象物件の構成が特許請求の範囲に記載された発明の構成要件を充足していても、発明の詳細な説明に記載された効果を奏しない場合には、対象物件が特許発明の技術的範囲に属するとすることはできないものというべきである。けだし、特許発明は、従来技術と異なる新規な構成を採用したことにより、各構成要件が有機的に結合して特有の作用を奏し、従来技術にない特有の効果をもたらすところに実質的価値があり、そのゆえにこそ特許されるのであるから、対象製品が明細書に記載された効果を奏しない場合にも特許発明の技術的範囲に属するとすることは、特許発明の有する実質的な価値を超えて特許権を保護することになり、相当ではないからである」、「特許発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならないものであるから、たとえ対象物件が特許発明と同様の作用効果を奏するとしても、その構成が特許請求の範囲の記載と異なれば、特許発明の技術的範囲に属するとすることはできず、その意味では、作用効果に基づいて特許発明の技術的範囲を定めてはならない。しかし、特許請求の範囲の記載の技術的意義を解釈するに当たって作用効果を参酌することはもとより、対象物件が特許請求の範囲に記載された構成と同じであっても当該特許発明の作用効果を奏しない場合に対象物件が特許発明の技術的範囲に属しないとすることも、特許請求の範囲をその文言上の意味するところから作用効果を奏する範囲に限定して解釈するものにほかならないから、特許法70条1項の規定に反するものではない。なお、対象物件が特許請求の範囲に記載された構成要件を充足しながら、なおかつ特許発明の作用効果を奏しないためにその技術的範囲に属しないとされる場合には、対象物件が特許発明の作用効果を奏しないことの立証責任は、・・・・特許発明においては新規な構成と作用効果に関連性があり、新規な構成があるものとして特許された発明と同一の構成を対象物件が備える以上、同一の作用効果を奏するものと推定されるというべきであるから、これを争う特許権侵害訴訟の被告にあるものと解するのが相当である」と述べている。 |