大阪地裁(平成13年10月9日)“電動式パイプ曲げ装置事件”は、「出願経過中の手続補正書や意見書、特許異議答弁書等において、特許庁審査官の拒絶理由又は特許異議申立の理由に対応して特許請求の範囲記載の意義を限定する陳述を行い、それが特許庁審査官ないし審判官に受け入れられた結果、これらの拒絶理由又は異議理由が解消し、特許をすべき旨の査定ないしと特許を維持すべき旨の決定がされたような場合には、その特許権に基づく侵害訴訟において、特許権者が前記陳述と矛盾する主張をすることは、一般原則としての信義誠実の原則ないしは禁反言の原則に照らして許されないと解するのが相当である。なぜなら、出願経過における手続補正書や意見書、特許異議答弁書等の出願書類(包袋)は、何人も閲覧又は謄本の交付を請求することができる(特許法186条)のであり、出願人の前記のような行動や陳述は、一般第三者において、特許請求の範囲が限定されたものと理解するのが通常であり、第三者のこのような理解に基づく信頼は保護すべきものと解されるからである」と述べている。 |