大阪地裁(平成3年0月9日)“電動式パイプ曲げ装置事件被告は、電動式直管ベンダー、シュー及びガイドを別個にカタログに掲載し、その電動式直管ベンダーの欄に『シュー・ガイドは別売りです』と記載していることが認められ、これによれば、エンドユーザーがイ号装置を使用するには、電動式直管ベンダー、シュー及びガイドの3点を購入して組み合わせる必要があると推認される。電動式直管ベンダー(別紙イ号装置目録では本体に該当、シュー(同じく回転フォーマに該当)及びガイド(同じくベンディングダイに該当)は、いずれもイ号装置の構成の一部のみを備えたものであり、それだけでは本件発明の構成要件を充足しないが、少なくとも3点が同時に販売される場合には、共にイ号装置を構成するものとして、本件特許権を侵害するものというべきである」、「他方、特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ使用する物を生産し、譲渡し、貸し渡し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為は、当該特許権を侵害する行為とみなされるところ(特許法101条1号、ここでいう『その物の生産にのみ使用する物(サイト注:現『その物の生産にのみ用いる物)とは、社会通念上経済的、商業的ないしは実用的な他の用途がないことをいい、他の用途があるというためには、抽象的ないしは試験的な使用の可能性があるだけでは足りないというべきである。これを電動式直管ベンダー、シュー及びガイドについて検討すると、電動式直管ベンダーはイ号装置の本体であって他の経済的、実用的な用途を有しないから、イ号装置の生産にのみ使用されるものとして、その輸入、販売は特許法101条1号にいう間接侵害に当たる。他方、シュー及びガイドは、電動式直管ベンダーと手動式直管ベンダー(これは本件発明の構成要件を充足しない)に共通する部品であり・・・・、電動式直管ベンダーと組み合わせてイ号装置の部品として使用する以外に、手動式直管ベンダーと組み合わせて使用するという、実用的な他の用途があるというべきである。本件発明は、その特許請求の範囲の記載から明らかなとおり『本体に設けられたモータ』を有する『電動式パイプ曲げ装置』の発明であるから、手動式直管ベンダーを用いた製品は本件発明に係るものでないことはいうまでもない」、以上によれば、電動式直管ベンダーの販売は、それがシュー、ガイドと同時にされる場合には、共にイ号装置を構成するものとして直接本件特許権を侵害する行為に当たり、単体で販売される場合も、本件発明に係る物の生産にのみ使用する物の譲渡として間接侵害(特許法101条1号)に該当するといえる。これに対し、シュー及びガイドは、電動式直管ベンダーと同時に販売される場合には、共にイ号装置を構成するものとして直接本件特許権を侵害する行為に当たるが、電動式直管ベンダーとは別に単体で販売される場合には、直接本件特許権を侵害する行為に当たらないのはもとより、本件発明に係る物の生産にのみ使用する物の譲渡にも当たらないといわざるを得ない」と述べている。

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