東京高裁(平成3年1月8日)“三脚脚立事件以上(サイト注:均等の第1〜5要件)の理は、実用新案権侵害訴訟においても異なるところはなく、その場合には、上記Cの要件(サイト注:均等の第4要件)を実用新案法3条2項の規定に対応させると『C′対象製品が登録実用新案の出願時における公知技術と同一又は当業者がこれからその出願時にきわめて容易に推考できたものではないこと』との要件が妥当するものと解される」、「ところで、控訴人は、上記C′の要件・・・・の根底にある考えは、均等論による登録実用新案の技術的範囲の拡張が当該実用新案登録の無効理由を含む結果となる場合には、そのような拡張は許されないというものであるところ、補強杆の上端の取付位置を台枠の側杆とする構成とこれを後杆とする構成が均等であるとすると、これによって技術的範囲が拡張された本件考案は先願明細書記載の考案と同一となり、実用新案法3条の2本文(サイト注:特許法9条の2本文に相当)の規定に該当する無効理由を含むこととなるから、被控訴人の均等の主張は成り立たない旨主張する。そこで、控訴人の上記主張について判断するに、上記C′の要件が、そもそも何人も実用新案登録を受けることができなったはずのものについて、登録実用新案の技術的範囲に属するものということができないとの考えに基づくものであることは前示のとおりであるところ、ある登録実用新案が、その出願日前の他の実用新案登録出願であって当該実用新案登録出願後に出願公開がされたものの願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された考案と同一であるときも、実用新案法3条の2本文の規定により、当該考案は何人も実用新案登録を受けることができなかったはずのものであることに変わりはないから、このような場合には、上記C′の要件に規定する場合と同様、これを登録実用新案の技術的範囲に属するとすることは相当ではない。したがって、対象製品が登録実用新案の先願に係る実用新案法3条の2本文に規定する明細書又は図面に記載された考案と同一である場合には、出願時における公知技術に準じ、対象製品が実用新案登録請求の範囲に記載された構成と均等なものとしてその登録実用新案の技術的範囲に属すると解することはできないというべきである。控訴人の上記主張もこの趣旨をいうものと解されるのであり、対象製品が登録実用新案の技術的範囲に含まれるか否かの場面における議論である均等論と無効理由の存在とは全く別個の問題であるとする被控訴人の主張は採用することができない」と述べている。

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