東京地裁(平成3年2月8日)“自動弾丸供給機構付玩具銃事件特許法102条2項所定の『侵害の行為により利益を受けているとき』における『利益』とは、侵害者が侵害製品の製造、販売のみに要する専用の設備や従業員を新たに設置し、あるいは雇い入れたといった例外的な事情がない限り、侵害製品の売上額から仕入れ、加工、梱包、保管、運送等の経費のうち侵害製品の製造、販売のみのために要した部分を控除した限界利益ともいうべきものを指すと解するのが相当である。そして、上記限界利益の範囲は、財務会計上の観点のみから決せられるものではなく、不法行為法における損益相殺の観点に加えて、侵害者がその侵害行為によって得た利益の額をもって特許権者の逸失利益と推定することにより、特許権者による損害賠償請求に当たってその主張立証責任を軽減し、特許権者の保護を図るという特許法102条の規定の趣旨に照らして解釈するのが相当である」と述べている。

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