東京高裁(平成4年0月1日)“新規芳香族カルボン酸アミド誘導体の製造方法事件被控訴人らは、本件発明の目的物質であり、本件特許出願前に日本国内において公然知られた物でない物を、生産、販売等している者として、この推定を覆すためには、自ら生産販売等している本件発明の目的物質につき、その製造方法を開示した上、それが本件発明方法と異なる方法であり、その技術的範囲に属しないことまで主張し、かつ、立証することを要する」、被控訴人らは、特許法104条の規定による推定が生じるのは、新規な物質と同じ物は、同じ方法で製造されているとの蓋然性があるためである、しかし、本件においては、被控訴人白鳥がトラニラストを製造していた時期には、その製造方法は既に幾つもあったのであるから、推定が生じる根拠がそもそもなくなっていた、したがって、本件については、104条の規定による推定は働かない、と主張する。しかし、特許法104条が『その物が特許出願前に日本国内において公然知られた物でないときは、その物と同一の物は、その方法により生産したものと推定する』と規定し、推定の前提事実として『その物が特許出願前に日本国内において公然知られた物でない』こと以外に何も定めていないのは、推定の根拠としては上記事実のみを取り上げるとの法政策を宣言したものと解すべきであり、この明文に反して、被控訴人らの上記主張を使用すべき理由は見いだし難い。被控訴人らの主張は採用することができない」と述べている。

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