大阪高裁(平成4年1月2日)“エアロゾル製剤事件特許法0条1項が規定するとおり、特許発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。しかして、特許請求の範囲に記載されているのは特許発明の構成要件であるから、対象製品が特許発明の技術的範囲に属するか否かは、特許請求の範囲に記載された特許発明の構成要件によって定められることとなる。そして、通常、当該特定の構成要件に対応して特定の作用効果が生じることは客観的に定まったことがらであり、出願者がこのようなうちから明示的に選別した明細書記載の作用効果が生じることも客観的に定まったことがらであるから、対象製品が明細書に記載された作用効果を生じないことは、当該作用効果と結びつけられた特許発明の構成要件の一部又は全部を構成として有していないことを意味し、又は、特許発明の構成要件の一部又は全部を構成として有しながら同時に当該作用効果の発生を阻害する別個の構成要素を有することを意味する。したがって、対象製品が特許発明の技術的範囲に属しないことの理由として明細書に記載された作用効果を生じないことを主張するだけでは不十分であって、その結果、当該作用効果と結びつけられた特許発明の特定の構成要件の一部又は全部を備えないこと、又は、特許発明の構成要件の一部又は全部を構成として有しながら同時に当該作用効果の発生を阻害する別個の構成要素を有することを主張する必要がある。このことは,明細書の発明の詳細な説明の記載に関する6条4項等の規定を前提としていい得ることである」、化学や医薬等の発明の分野においては、特許発明の構成要件の全部又は一部に包含される構成を有しながら、当該特許発明の作用効果を奏せず、従前開示されていない別途の作用効果を奏するものがあり、このようなものは、当該特許発明の技術的範囲に属しない新規なものといえる。したがって、このようなものについては、対象製品が特許発明の構成要件を備えていても、作用効果に関するその旨の主張により、特許発明の技術的範囲に属することを否定しうる」と述べている。

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