最高裁(平成14年2月22日)“商標事件”は、「いったん登録された商標権について商標登録の無効審決がされた場合に、これに対する取消訴訟を提起することなく出訴期間を経過したときは、商標権が初めから存在しなかったこととなり、登録商標を排他的に使用する権利が遡及的に消滅するものとされている(商標法46条の2(サイト注:特許法125条に相当))。したがって、上記取消訴訟の提起は、商標権の消滅を防ぐ保存行為に当たるから、商標権の共有者の1人が単独でもすることができるものと解される。そして、商標権の共有者の1人が単独で上記取消訴訟を提起することができるとしても、訴え提起をしなかった共有者の権利を害することはない」、「無効審判は、商標権の消滅後においても請求することができるとされており(商標法46条2項(サイト注:特許法123条3項に相当))、商標権の設定登録から長期間経過した後に他の共有者が所在不明等の事態に陥る場合や、また、共有に係る商標権に対する共有者それぞれの利益や関心の状況が異なることからすれば、訴訟提起について他の共有者の協力が得られない場合なども考えられるところ、このような場合に、共有に係る商標登録の無効審決に対する取消訴訟が固有必要的共同訴訟であると解して、共有者の1人が単独で提起した訴えは不適法であるとすると、出訴期間の満了と同時に無効審決が確定し、商標権が初めから存在しなかったこととなり、不当な結果となり兼ねない」、「商標権の共有者の1人が単独で無効審決の取消訴訟を提起することができると解しても、その訴訟で請求認容の判決が確定した場合には、その取消しの効力は他の共有者にも及び(行政事件訴訟法32条1項)、再度、特許庁で共有者全員との関係で審判手続が行われることになる(商標法63条2項の準用する特許法181条2項)。他方、その訴訟で請求棄却の判決が確定した場合には、他の共有者の出訴期間の満了により、無効審決が確定し、権利は初めから存在しなかったものとみなされることになる(商標法46条の2)。いずれの場合にも、合一確定の要請に反する事態は生じない。さらに、各共有者が共同して又は各別に取消訴訟を提起した場合には、これらの訴訟は、類似必要的共同訴訟に当たると解すべきであるから、併合の上審理判断されることになり、合一確定の要請は充たされる」、「以上説示したところによれば、商標権の共有者の1人は、共有に係る商標登録の無効審決がされたときは、単独で無効審決の取消訴訟を提起することができると解するのが相当である」、「なお、・・・・最高裁平成・・・・7年3月7日・・・・判決(サイト注:拒絶審決取消訴訟は固有必要的共同訴訟である旨)・・・・は、本件と事案を異にし適切でない」と述べている。 |