東京高裁(平成4年月7日)“アルカリ蓄電池用ニッケル電極活物質事件原告は、本件発明は、物の発明であり、物を得るための方法の発明ではない、そして、その物は、現に得られており、特有の作用効果を呈しているものである、このようなとき、その物を得るための方法が明細書に記載されていないからといって、物の特許性を否定してしまうのは、物の発明について特許を得るために、その物を得るための方法まで開示しなければならないことにも通じ、発明保護の見地から著しく不合理である、と主張する。しかしながら、仮に、明細書に、従来技術の下で存在しなかった物が、現に得られており、特有の作用効果を呈していることが記載されているとしても、それは、その物に新規性がある、進歩性があるというにすぎない。特許法は、新規性、進歩性に関する9条1項、2項の規定のほか、・・・・特許法6条4項によって、当業者にとって実施容易であることをも要件としているのである。原告の主張は、要するに、当業者が実施することができなくても、新規性、進歩性があるものには特許を認めよ、ということであり、特許法による発明保護の要件の理解を誤っているという以外にない。原告の主張は、採用できない」と述べている。

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