東京高裁(平成14年3月28日)“風味持続性にすぐれた焼き菓子の製造方法事件”は、「特許制度は、『創作』を保護する制度であり(特許法1、2条参照)、『発見』自体は、保護の対象としていない。他方、特定の発明の作用効果は、客観的には、すべて、当該発明の構成の必然的な結果であり(逆にいえば、当該構成の必然的な結果でないものを当該発明の作用効果とすることはできない。)、構成とは別の要素として存在し得るものではない。そうだとすると、構成自体は既に公知となっている発明についてはもちろん、構成自体についての容易推考性の認められる発明についても、その作用効果のみを理由に特許性が認められるということは、本来あり得ないことである、ということもできるであろう。ただ、構成自体についての容易推考性の認められる発明であっても、その作用効果が、その構成を前提にしてなおかつ、その構成のものとして予測することが困難であり、かつ、その発見も困難である、というようなときに、一定の条件の下に、推考の容易なものであるとはいえ新規な構成を創作したのみでなく、上記のような作用効果をも明らかにしたことに着目して、推考の困難な構成を得た場合と同様の保護に値すると評価してこれに特許性を認めることには、特許制度の目的からみて、合理性を認めることができると考えられる。しかし、このような立場に立ったとしても、特許制度は上記のとおり『創作』を保護するものであって『発見』を保護するものではない、ということを前提にする限り、構成自体の推考は容易であると認められる発明に特許性を認める根拠となる作用効果は、当該構成のものとして、予測あるいは発見することの困難なものであり、かつ、当該構成のものとして予測あるいは発見される効果と比較して、よほど顕著なものでなければならないことになるはずである」と述べている。 |