大阪高裁(平成4年0日)“複層タイヤ事件被控訴人らは、控訴人(サイト注:特許権者)の複層タイヤの知名度、控訴人の製品と被控訴人会社の製品との価格差等を理由に、控訴人は、被控訴人会社が加工又は加工販売した数量の複層タイヤを販売できたとはいえないと主張する(ア)被控訴人らは、被控訴人会社の販売先4社のうち、西日本タイヤ及びトーヨージャイアントは、控訴人の存在を知っていたものの、自ら控訴人から複層タイヤを購入したことはなく、その余の取引先は控訴人の存在を知らなかった旨主張するところ、被控訴人会社の販売先作成に係る陳述書・・・・によれば、上記主張に沿う事実(ただし、控訴人の存在を認識していたか否かについて言及しているのは、上記掲記の陳述書を提出した2社である)が認められる(イ)証拠・・・・によれば、控訴人は複層タイヤ・・・・を7万円ないし7万5000円で販売していることが認められ、一方、被控訴人会社の販売する複層タイヤの売値は・・・1500円から1万円であるから、両者の間には7倍から0倍に至る価格差がある。証拠・・・・及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人会社は、外装タイヤに中古タイヤや再生タイヤを用いることが多く、販売先が提供した外装タイヤを用いて複層タイヤを製造することもあることが認められるが、上記の事情を考慮しても、なお上記価格差は著しいものというべきである。そして、販売価格差が著しいことに加え、証拠・・・・によれば、被控訴人会社が複層タイヤを販売した取引先4社が、売値が7万5000円とすれば非常に高いとの意見を述べていること、近年、通常のタイヤの中にもトレッド部の厚さがより厚い製品が開発され、いわゆるノーパンクタイヤやウレタンタイヤなど複層タイヤに代替する製品も存在することが認められることに照らすと、複層タイヤは、パンクが起き易い場所等においてパンクの発生を減らし、外装タイヤを摩耗するまで使用するために用いられるものであり、いわばコスト軽減のために使用される製品であるから、複層タイヤを用いるか否かの判断において、上記パンクを減らすことのメリットとの比較において、複層タイヤに要するコストが重要な要素となると考えられる。上記のような事情に前(アの事実も勘案すると、被控訴人会社が販売したA型タイヤの数量の7割については、控訴人において販売することができないとする事情があり、控訴人において販売することができたのは、被控訴人会社が販売したA型タイヤの数量のうち3割程度にとどまると認めるのが相当である」と述べている。

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