東京高裁(平成4年5日)“ヒト白血球インタフェロン事件、「『頒布された刊行物に記載された発明』においては、特許を受けようとする発明が新規なものであるかどうかを検討するために、当該発明に対応する構成を有するかどうかのみが問題とされるのであるから、当業者が容易に実施できるように記載されているかどうかは、何ら問題とならないものというべきである。むろん、当該発明が、未完成であったり、何らかの理由で実施不可能であったりすれば、これを既に存在するものとして新規性判断の基準とすることができないのは当然というべきであるから、その意味で『頒布された刊行物に記載された発明』となるためには、当該発明が当業者にとって実施され得るものであることを要する、ということはできる。しかし、容易に実施し得る必要は全くないものというべきである。このことは、例えば、当業者であっても容易に実施することができないほど極めて高度な発明がなされたとき、当業者が容易に実施することができないからといって、新規性判断の資料とすることができないといえないことからも、明らかである。要するに、特許法9条1項3号の『頒布された刊行物に記載された発明』に求められるのは、公知技術であるということに尽き、その実施が容易かどうかとは関係がないものというべきである」と述べている。

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