大阪地裁(平成4年53日)“希土類−鉄系合金からの希土類元素及びコバルトの回収方法事件発明者は、発明完成と同時に、特許を受ける権利を取得するとともに、人格権としての発明者名誉権を取得するものと解される。この発明者名誉権は、特許法には明文の規定はないが、パリ条約4条の3は『発明者は、特許証に発明者として記載される権利を有する』と規定しており『特許に関し条約に別段の定があるときは、その規定による』とする特許法6条によれば、発明者掲載権に関するパリ条約4条の3の規定が我が国において直接に適用されることになる。また、特許法においても、@特許権の設定の登録があったときに、特許庁長官が特許権者に特許証を交付することを定めた特許法8条1項、及び特許証には発明者の氏名を記載しなければならないと定めた同法施行規則6条4項、A特許を受けようとする者が特許出願に際して提出する願書に発明者の氏名及び住所又は居所を記載することとした同法6条1項2号、B発明者の氏名を出願公開の特許公報の掲載事項とした同法4条2項3号、C発明者の氏名を特許公報の掲載事項とした特許法6条3項3号の各規定が置かれ、これらは、発明者が発明者名誉権(発明者掲載権)を有することを前提とし、これを具体化した規定であると理解できる。そして、人格権たる発明者名誉権(発明者掲載権)は、上記のとおり、発明者の名誉を保護するものであって、名誉は生命、身体とともに極めて重大な保護法益であることからすると、物権の場合と同様に排他性を有する権利であると解される。したがって、発明者名誉権が侵害された場合には、真の発明者は、侵害者に対し、人格権たる発明者名誉権に基づいて侵害の差止めを求めることができるものと解すべきである。しかるところ、真実は当該発明の発明者でありながら、出願人が特許出願の願書に発明者としてその氏名を記載しなかったために、特許公報や特許証にその氏名が記載されない場合には、真の発明者の発明者名誉権は侵害されたことになる」と述べている。

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