東京地裁(平成14年6月24日)“6本ロールカレンダーの構造事件”は、「被告が、本件特許出願の際、現に本件発明の実施である事業の準備をしていたということはできない。その理由は以下のとおりである。すなわち、@被告は、三晃プラスチックからの打診を受けて、6本ロールカレンダーを提案し、その過程で本件図面を作成したが、本件図面は、装置の大まかな構造を示すものであって、寸法も装置全体の長さを表記した程度のものであって、あくまでも概略図にすぎないこと、A被告は、三晃プラスチックからの引合いの過程で作成した本件図面をどのように使用したか(交付したのかどうか、提示したのかどうか)について不明であること、B被告が三晃プラスチックに対して提案した『M+1型』カレンダーについて、本件図面の他に、製造や工程に関する具体的内容を示すものは何ら存在しないこと、C一般に、高分子用カレンダーのような装置については、顧客の要望にあわせて設備全体の仕様、ロールに用いる材質等を決め、設計を行う必要があるところ、製造、販売するための手順、工程、フレーム等の強度計算等が行われた形跡は全くないこと、D被告において、M+1型ロールカレンダー以外の装置について製造の注文を受けた場合には、確定仕様書や各ロール配置とこれに伴う附属設備等を記載した詳細な図面を作成しているが・・・・、M+1型ロールカレンダーについては、このような作業が全くされていないこと、E確定仕様書には、ロールの形状、寸法、運転速度、周速比、駆動電動機の種類や能力、伝導装置の構成、温度制御の方式、対象となる処理材料等のすべてにわたり、具体的、詳細な内容が記載されるが、そのような書面が存在しないこと等の事実に照らすならば、被告は、本件特許出願時において、本件発明の実施について、実施予定も具体化しない極めて概略的な計画があったにすぎないと解されるのであって、被告において本件発明を即時実施する意図を有しており、これが客観的に認識される態様、程度において表明されていたとは到底いえないというべきである」と述べている。 |