東京高裁(平成14年7月9日)“記録媒体事件”は、「再度の審判手続において、審判官は、前判決の『本件特許発明は、原実願の当初明細書に開示されていない事項をその要旨とするものと認められる。』、『本件特許の出願日は、原実願の出願日である昭和55年6月9日まで出願日が遡及することはなく、その現実の出願日である昭和62年4月16日になる』との認定判断に抵触する認定判断をすることは許されないというべきであるから、・・・・審判官は、本件発明の要旨変更及び遡及効の問題については、もはや認定判断をする余地はなかったのであり、被請求人(原告)に主張立証を許すべきでもなかったのである」、「原告は、特許庁が本件審決をするに際し、前判決の拘束力を受けるのは、審決取消後の再度の審判手続において、実質的に新たな主張も立証もなされていない場合、すなわち、前審決及び前訴訟において取り調べられた証拠と同じ証拠に基づいて、取消判決により違法と判断された審決の理由と同じ理由により、前審決と同じ結論の審決をすることを禁ずるということである、と主張する。しかしながら、再度の審判手続において、取消判決の拘束力の及ぶ判決理由中の認定判断につき、新たな証拠を追加した上のことで、従前と同様の主張を繰り返すことは、結果的に、確定した取消判決の判断自体が違法であるとすることにほかならず、これを許すならば、確定した取消判決の判断を導き出すのに必要とされた事実認定及び法律判断についても、新たな証拠を追加することにより、審判手続において、果てしなく同様の紛争を蒸し返すのを許すことになる。このようなことは、確定した取消判決について、行政庁に対して、処分又は裁決を違法とした判決の判断内容を尊重し、その事件について判決の趣旨に従って行動し、これと矛盾するような処分等がある場合には、適当な措置を採るべきことを義務づけている行政事件訴訟法33条1項の趣旨とも、審判、審決取消訴訟の制度の趣旨とも相容れないものというべきである。原告の主張は、採用できない」と述べている。 |