東京高裁(平成14年9月26日)“ポスト用異物収集装置事件”は、「審決は、被請求人(被告)が、郵政大臣官房財務部長が作成した平成8年10月7日付け『指名競争入札の通知について』と題する書面が、不特定多数の第三者に配布されたことにより、同書面に添付された図面に開示されていた本件発明が、同日に公知となったことを認めている、と認定した」、「審決は、その上で、『被請求人は、・・・・本件審判手続において、発明者であり同時に出願人(特許権者)の代表者であるA自身が『意に反して』公知にされたこと(すなわち、本人に公表という事実を容認する意思がなかったこと)を陳述し・・・・、本件が特許法30条第2項(サイト注:現1項)の『意に反して第29条第1項各号の一に該当するに至った発明』であると主張、立証している。・・・・上記図面が、仮にいずれ公示されるという性格のものであったとしても、何時の時点で公示されるのかは特許を受けようとする者においては必ずしも明らかではない場合もあり得ると考えられ、少なくとも特許を受けようとする者の『意に反して』早期に公知にされてしまうこともあり得る・・・・。従来から、学説・判例とも、特段の事情のない限り、『意に反して』は厳格に解釈されておらず、不注意や公表の時期の見込み違いによって特許法第29条第1項各号の一に該当するに至った場合も『意に反して』に当たると認めている・・・・』と認定判断した」、「被告代表者の陳述書・・・・及び同陳述書が引用している・・・・被告の審判事件答弁書・・・・並びに本訴において・・・・提出された・・・・被告代表者の陳述書・・・・によれば、次の事実が認められる。・・・・B郵政省は、被告が開発した本件防止装置を採用することを決定した上で、平成8年10月7日、官報に郵便ポストの指名競争入札の公示をし、同日、指名業者に対し、『指名競争入札の通知について』と題する本件書類を配布し、それに添付されていた本件図面が公表される結果となった。C被告は、本件防止装置を開発してきた上記の経過から、郵政省との随意契約により本件防止装置を納入することができると考えていたため、本件図面が特許出願前に上記のような経緯で公表されることは予想していなかった。D被告は、郵政省により本件防止装置が採用されることが確定してから、特許出願をする予定であったので、平成8年10月7日においては、本件特許について当然ながら出願をしていなかった。以上の事実によれば、郵政省が、平成8年10月7日、官報に郵便ポストの指名競争入札の公示をし、同日、指名業者に対し、『指名競争入札の通知について』と題する本件書類を配布し、それに添付されていた本件図面が公表される結果となったことは、被告の意に反するものであったと認めることができ、審決の認定に誤りはない」と述べている。 |