東京地裁(平成4年7日)“医薬品用プラスチック容器の栓体事件、「『結合』とは、一般に、2つ以上の系に相互作用を持たせて結びつけることを意味する『岩波 理化学事典』)。そうすると『密着結合』とは、単にラミネート膜とゴム栓との間に空間がない状態(このような状態は単なる『密着』にすぎない)ではなく、両者の間に『結合』といえるような相互作用が働いていることを要するというべきである。そして、本件公報の明細書の記載によると、本件発明の作用効果の1つは、ゴム栓とラミネート膜とを『密着結合』させることによって、従来品にあった刺通時におけるプラスチック隔膜の破片の容器内落下という問題及びゴム栓とプラスチック隔膜間の空間の存在に起因する薬液とゴム栓との接触という問題を解決し、使用時における針刺容易性及び安全性を確保することにあると認められる。そうすると『密着結合』といえるためには、少なくとも、本件発明の目的である『刺針時に隙間が生じてゴム栓と薬液とが接触することを妨げる』程度の接合強度を有することが必要であり、刺針時にゴム栓からラミネート膜が剥がれてゴム栓の表面とラミネート膜との間に隙間が生じるような場合には、ラミネート膜とゴム栓が『密着結合』しているとはいえないものというべきである。この点、原告は『密着結合』とはゴム栓とラミネート膜との間に『空間』がないことであると主張するが、この主張は、既に述べたところから、採用できないことは明らかである。また、証拠・・・・によると、原告は、無効審判請求事件の答弁書において『本件発明は、請求項1でゴム栓とラミネート膜が『密着結合』するという文言を用いているが、これは例えば本件公報・・・・に説明されているように、未架橋ゴムシート・・・・にラミネートフィルム材・・・・を貼合させ・・・・、ついで加熱加圧・・・・してゴム栓・・・・の架橋成形と表面へのラミネート膜・・・・の形成を同時に行うことによって『密着結合』させるものである。この処理条件からみてゴム栓とラミネート膜との接合状態が・・・・単に重ね合わせられたものと相違することは明らかである。そして、特許庁における審理経緯においても、この点が認められて特許審決されているのである。』、『本件発明においては単にゴム栓とラミネート膜との間の空間をなくして両者を密着させることにその解決手段を求めているのではなく、ゴムとプラスチックフィルムのラミネート膜とを密着結合・・・・させているのであるから機械的に押さえつけた状態と相違することはいうまでもない』と主張しており、本件発明の『密着結合』がゴム栓とラミネート膜との間に『空間』がないだけではないことを自認しているのであるから、このことから考えても、原告の上記主張は、採用できない」と述べている。

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