東京地裁(平成5年10日)“合成樹脂被覆ワイヤーの緊張機事件本件特許発明のうち構成要件Dを除く構成は、先行技術1及び2においてすべて開示されており、かつ、先行技術1及び2を組み合わせることが、当業者にとって容易に想到できるものであることは明らかである。そうすると、仮に構成要件Dを欠いた場合には、本件特許発明は、進歩性を欠くものとして特許を付与されなかったことが、明らかというべきである・・・・。他方、構成要件Dに示されている構成は、・・・・特殊な構造であり、本件における証拠・・・・に照らせば、本件特許発明の出願当時、新規な構成であったものと認められる。そうすると、本件特許発明における構成要件D以外の各構成要件を備えたワイヤー緊張機は、本件特許発明の出願当時に既に公知であった技術(先行技術1及び2)の組み合わせにより容易に想到できたものであるところ、本件特許発明は、その構成中に構成要件Dの構成を新たに採り入れることにより、当該作用効果を実現するための技術的手段として進歩性を有するものとして、特許を付与されたものと認められる。そうすると、課題を解決するために本件特許発明において特徴的な手段は、・・・・構成要件Dの構成であり、結局、構成要件Dは本件特許発明における本質的部分というべきである」、「被告製品を本件特許発明と対比すると相違点2が存在し、被告製品は本件特許発明の構成要件Dを充足しないものであるところ、相違点2については、均等の要件1(非本質的部分)を充足するものとは認められず、・・・被告製品を本件特許発明の構成と均等なものということはできない」と述べている。

特許法の世界|判例集