東京高裁(平成5年3日)“ダイナミックランダムアクセスメモリ事件特許法9条・・・・の規定によれば、特許出願に係る発明が、特許法9条等の規定により特許をすることができないものとされるときは、審査官は、その特許出願について拒絶査定をしなければならない。このことは、・・・・1つの特許出願における複数の請求項に係る発明のいずれか1つが、特許法9条等の規定により、特許をすることができないものとされるときは、その特許出願全体を拒絶すべきことを規定しているものと解すべきである」、「もっとも、他方では、このような制度によると、1つの特許出願における複数の請求項に係る発明の1つについて、特許法9条の規定する特許をすることができない事由がある場合には、状況によっては、その他の請求項に係る発明について、特許付与を受ける機会が奪われることになり、出願人にとって不利益な結果となることが懸念されるところである。しかし、・・・・特許法は、審査官に拒絶査定の前に拒絶の理由を通知すべき義務を負わせ(0条、出願人は、拒絶理由通知を受ける前はいつでも、同通知を受けた後は所定の期間内に、明細書又は図面について補正をする機会を与えられているのであり(7条の2第1項、4項、審判においても、同様に拒絶理由の通知の制度(159条2項)と明細書又は図面の補正の機会が与えられている(7条の2第1項、4項)のであるから、出願人は、これにより拒絶理由通知により拒絶されることが予想される請求項に係る発明を補正したり、削除したりすることができ、拒絶自体を避けるために柔軟な対応をすることが可能となるのである。また、特許法は、出願人に分割出願の制度も認めており、出願人は、願書に添付した明細書又は図面について補正をすることができる期間内に限っては、2以上の発明を包含する特許出願の一部を1又は2以上の新たな特許出願とすることができるのである(4条1項。このように、出願人は、拒絶理由通知の制度、並びに、同通知の前及び同通知の後の所定の期間内における補正又は分割出願の制度により、適切な対応をすることが可能なのであるから、9条についての上記解釈により出願人が不利益を被る結果となることについては、十分な手続的な担保がなされているとみることができる」と述べている。

特許法の世界|判例集