東京高裁(平成15年6月26日)“水素化処理触媒事件”は、「発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう(特許法2条1項)のであるから、本件発明Aの発明者ということができる者は、その技術思想を創作した者であって、少なくとも、その者の本件発明Aに対する創作的行為の内容ないし結果が、本件明細書Aに本件発明Aの内容として何らかの形で記載されているべきものである。控訴人が自ら発見したと主張するスキン層及び電子顕微鏡によるその発見の手法については、・・・・本件明細書Aにおいて、直接的にも間接的にも何ら記載されていないのであり、これと本件発明Aとを結び付けるものを同明細書中に見いだすことができない。結局、本件発明Aの技術思想の中核的部分に当たるP因子についてはもちろん、本件発明Aの技術思想の一部についてでも控訴人がこれを創作したことを認めるに足りる証拠は全くないという以外にない」、「控訴人が本件明細書Aに発明者の1人として記載され、被控訴人が控訴人に対し、その社内規程に従って出願報償金、登録報償金を既に支払っていたことを斟酌しても、控訴人を本件発明Aの発明者の1人と認定することはできない、という以外にない(控訴人が本件明細書Aに発明者の1人として記載されたのは、被控訴人において、当時、従業員の中から職務発明の発明者を厳密に特定する必要があるとは考えられていなかったこと、控訴人が、第2グループの主任研究員(グループ長)として、L及びMによる本件発明Aに係る試験、研究業務を管理し、これを総括し応援する立場にいたこと等によるものと考えることができる。)」と述べている。 |