東京高裁(平成15年6月5日)“ギヤシェーパ加工方法事件”は、「原告は、甲3文献には、本件発明において技術的課題及び作用効果とされているものは全く示されていない、と主張する。しかしながら、異なる技術的課題から同一の構成の発明に至ることがあること、同一の構成がもたらす作用効果は、複数あり得るものであり、それらは客観的には常に定まっているとはいうものの、それらのうちどれを認識し、どれに着目するかは、人により時により変わり得るものであることは、いうまでもないところである。そうである以上、たとい、甲3文献に記載されたドライカットを採用した理由が、見本市における切削実演に当たり油剤の飛散を防ぎつつ、装置の動作状況を見学者に見せることにあり、ドライカットを用いたことによる作用効果が、油剤の飛散防止及び装置の動作状況を見学者によく見せることができるというものであって、同文献に、本件発明において技術的課題及び作用効果とされているものが全く示されていないとしても、そのことは、何ら、同文献に本件発明と同一の構成が記載されていると認識することを妨げるものではない。その構成を採用した動機やいきさつがどのようなものであろうと、その構成による作用効果を作成者がどのように認識していようと、その構成に接した者が技術課題や作用効果をどう理解しようと、公知文献に当該発明と同一の構成が記載されている以上、公知文献には当該発明と同一の『発明の構成』が開示されていると認める以外にないのである。原告の主張は、結局のところ、甲3文献に既に開示されている構成の発明(引用発明)について、それまで知られていなかった作用効果を発見したことと、同発明の構成自体を創出したこととを混同し、前者をもって後者に換えようとするものであって、誤りであることが明らかである。このような発見は、それが発見にとどまり、新しい構成を生み出さないままにある限り、情報自体としてはどのように価値のあるものであっても、創作を保護の対象とする特許法によって保護されることはないからである。原告の主張は採用することができない」、「公知発明と構成が同一である発明に特許が与えられることはあり得ない」と述べている。 |