東京地裁(平成5年88日)“同時オン防止手段事件原告が本件審査請求において不服申立ての対象としている本件補正命令は、特許法133条2項の規定に基づいてされたものであるところ、同項の補正命令は、審判事件に関する手続の方式に関して瑕疵があった場合、これを審判長が指摘し、審判当事者に対してその補正の機会を与え、その補正を促すにとどまるものであって、手続の補正を命ぜられた審判当事者の権利義務を直接形成し、あるいはその権利義務の範囲を確定するものではない。したがって、本件補正命令は、行政不服審査法に基づく不服申立ての対象となる『行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為』に該当するものとはいえない」、「手続の補正を命ぜられた審判当事者が補正命令に応じなければ、結果的に特許法133条3項により当該手続が却下されることになるが、当該手続が却下されることになるのは、あくまでも同項の規定に基づく却下決定という処分により発生する効果であり、本件補正命令そのものによる効果ではない。審判当事者とすれば、補正命令に不服であるとしても、これに続いてされる手続の却下決定を待って、当該却下処分の取消しを求める手続の中で補正命令の誤りを主張すれば足りるものであって、補正命令につき独立してその取消しを求める利益があるものではない」、「上記のとおり、本件補正命令は、行政不服審査法に基づく不服申立ての対象となる『行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為』に該当するものではないから、これと同旨の判断により本件審査請求を不適法なものとして却下した本件裁決に、原告主張のような違法はない」と述べている。

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