東京高裁(平成15年9月9日)“ガス圧力式玩具銃事件”は、「本件発明の特許請求の範囲の記載を見ただけでは、本件発明が、どのような構成によって、弾丸の発射が行われた後にスライダ部の後退が開始されるようにしているのかを明確に理解することはできない」、「本件発明に係る特許請求の範囲の記載が上記のとおりのものである以上、内容を明確に理解するためには、本件明細書中の発明の詳細な説明及び図面を参酌する必要がある」、「本件明細書・・・・には、弾丸の発射が行われた後にスライダ部の後退が開始されるようにするための構成に関するものとして、本件発明の実施例・・・・がある。そして、本件明細書には、実施例についてのこれらの記載及び図面以外には、上記構成に関する記載も図面も一切存在しない」、「本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び図面の記載状況(実施例に記載された以外には、弾丸の発射が行われた後にスライダ部の後退が開始されるようにするための構成についての記載は一切ない、ということを含む。)に照らすならば、本件発明における特許請求の範囲中の、『上記摺動部材が、上記空間部形成部材内に得られるガス圧により上記装弾室に供給された弾丸が銃身部内に移動せしめられることになる状態をとった後、該弾丸の銃身部内への移動により生じる上記空間部形成部材内におけるガス圧の低下に伴って位置が切り換えられ、上記スライダ部の後退及びその後の前進、及び、それに伴う上記空間部形成部材の移動が生じて、上記弾倉部からの弾丸が上記装弾室に送り込まれることになる状態をとる』(構成要件D)のうち、『上記摺動部材が、・・・・該弾丸の銃身部内への移動により生じる上記空間部形成部材内におけるガス圧の低下に伴って位置が切り換えられ(る)』(構成要件DB)とは、・・・・実施例に記載されたコイルスプリング又はこれと均等(等価)な、摺動部材を前方に付勢する部材による付勢力の存在下において、弾丸の銃身部内への移動により生じる空間部形成部材内のガス圧の低下を原因として摺動部材の位置が切り換えられるということであると解すべきである」と述べている。 |