東京高裁(平成16年2月27日)“検体採取用試験管準備方法事件”は、「本件仕様書に記載された発明について、アイディエスとランス及び高園産業との間において、秘密保持に関する格別の明示的な合意が存在したことを認めるに足りる証拠はない。しかしながら、一般に、発明の実施品である新製品の開発及び製品販売にかかわる製造販売者と販売仲介業者及び需要者側との間においては、秘密保持に関する格別の明示的な合意や明示的な指示又は要求がなくとも、販売仲介業者及び需要者側が当該新技術を第三者に開示しないことが暗黙のうちに求められ、製造販売者もそうすることを期待し信頼して当該新技術を販売仲介業者及び需要者側に開示することは、十分あり得ることであるから、このような場合には、社会通念上又は商慣習上、販売仲介業者及び需要者側は、当該新技術につき製造販売者のために秘密に保つべき関係に立つものというべきである」、「本件仕様書の記載内容に係る新製品第1号機である採血管自動準備システムの開発及び製品販売についてこれをみると、アイディエスは製造販売者であり、かつ、その代表者は豊富な特許・実用新案の出願経験と実績を有し、現に本件仕様書の交付と相前後してその記載内容の構成と同一ではないが技術分野を共通にする出願をしていた者であり、また、高園産業は販売仲介業者であるとともにアイディエスに対する開発資金の協力者であり、ランスは需要者である横浜労災病院の契約交渉担当者であって、これらの3社は相互に密接な協力関係にあったことが明らかである。そうすると、以上の認定及び判断を総合考慮すれば,遅くとも本件優先日前においては、高園産業及びランスは、本件仕様書の記載内容を第三者に開示しないことが暗黙のうちに求められ、アイディエスもそうすることを期待し信頼して本件仕様書を高園産業及びランスに開示したものであって、高園産業及びランスは、アイディエスのために本件仕様書の記載内容について秘密に保つべき関係に立っていたものと認めるのが相当である」と述べている。 |