東京地裁(平成6年43日)“プリント基板メッキ用治具事件、「『発明による課題の解決に不可欠なもの』という客観的要件は『〜にのみ用いる』という専用品の要件を外したことにより、間接侵害規定が特許権の効力の不当な拡張とならないよう、間接侵害規定の対象物を『発明』という観点から見て重要な部品等に限定するために設けられたものと説明されている。したがって、この『発明による課題の解決に不可欠なもの』とは、特許請求の範囲に記載された発明の構成要素(発明特定事項)とは異なる概念であり、当該発明の構成要素以外の物であっても、物の生産や方法の使用に用いられる道具、原料なども含まれ得るが、他方、特許請求の範囲に記載された発明の構成要素であっても、その発明が解決しようとする課題とは無関係に従来から必要とされていたものは『発明による課題の解決に不可欠なもの』には当たらない。すなわち、それを用いることにより初めて『発明の解決しようとする課題』が解決されるような部品、道具、原料等が『発明による課題の解決に不可欠なもの』に該当するものというべきである。これを言い換えれば、従来技術の問題点を解決するための方法として、当該発明が新たに開示する、従来技術に見られない特徴的技術手段について、当該手段を特徴付けている特有の構成ないし成分を直接もたらす、特徴的な部材、原料、道具等が、これに該当するものと解するのが相当である。したがって、特許請求の範囲に記載された部材、成分等であっても、課題解決のために当該発明が新たに開示する特徴的技術手段を直接形成するものに当たらないものは『発明による課題の解決に不可欠なもの』に該当するものではない」と述べている。

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