東京高裁(平成16年4月27日)“力成分を測定する単結晶材料製のデバイス事件”は、「原告は、本件では本件拒絶査定謄本の送達日の翌日から起算して30日目は平成15年5月31日で、土曜日であって、原則であれば同年6月2日が審判請求の請求期間の末日となる筋合いであるところ、本件においては、本件出願の出願人である原告が在外者であったことから、特許庁長官の職権により、法121条1項の期間が60日間だけ延長されており、したがって、法121条1項の期間満了日である同年6月2日から更に60日間延長された同年8月1日が本件審判請求の請求期間の末日であるというべきである旨主張する」、「しかして、法4条により期間が延長された場合、元の期間と延長期間とは一体となり、これらを合計したものが1つの期間として手続のできる期間が定まるものであり、このように期間が延長されたときにおける法3条2項の規定にいう『期間の末日』とは、その合計された1つの期間の末日を指称するものと解されるから、延長される以前の元の期間の末日が、行政機関の休日等に当たるからといって、これに法3条2項を適用する余地はないというべきである」、「本件についてみると、本件拒絶査定の謄本の原告への送達日は平成15年5月1日であるところ、本件出願の出願人である原告は在外者であるから、本件拒絶査定に対する審判請求の期間については、上記のとおり、法121条1項に規定する法定請求期間(30日)を職権で60日延長したこととする取扱いが適用される。したがって、本件拒絶査定に対する審判請求は上記謄本の送達の日から90日以内、すなわち同請求期間の末日である同年7月30日までにされなければならないというべきである。しかるに、弁論の全趣旨によれば、本件審判請求がされたのは同年7月31日であることが認められるから、本件審判請求は、上記審判請求期間の期間経過後にされた不適法なものというべきである。この点に関する本件審決の判断に誤りはない」、「法121条2項にいう『その責めに帰することができない理由』とは、天災地変その他客観的に避けることのできない事故のほか、通常の注意力を有する当事者が万全の注意を払っても回避することのできない事情を意味するものと解される。原告は、前記・・・・のような解釈は、法4条の『延長』の字句からはおよそ導出できない技巧的な解釈であり、通常の当事者としては思い至るのが困難であるとか、審判便覧25−01『法定期間及び指定期間の取扱い』・・・・において、特許庁長官は、拒絶査定に対する審判請求期間については、在外者には一律に『60日間』の延長を認め、これについて何らの例外を設けていないのであるから、通常人からすれば、いかなる場合においても二義なく元の期間の満了日の翌日から60日間の延長期間が開始されると考え、元の期間の計算方法が変更されるなどとは考えないとしても、無理からぬことというべきである旨主張する。しかしながら、本件審判請求の手続は、代理人である弁理士によって行われているところ、特許管理人として審判請求手続等に関与する弁理士は、審判請求手続等に関する法令の解釈・運用について具体的に知りうる立場にあり、かつ、その知見を獲得すべき義務を負っているのであって、審判請求の請求期間の計算方法に疑義があればそれについて調査をし適切な対応をすべきであり、本件において、そのことに格別の困難性があるとは認められない。したがって、期間が延長された場合の期間計算について原告主張のような誤った解釈をしたため、本件審判請求について請求期間を徒過する結果になったものとしても、そのような事態は、本件審判請求における原告の代理人が万全の注意を払えば回避できたことである」、「したがって、本件審判請求について請求期間を徒過したことにつき法121条2項にいう『その責めに帰することができない理由』があるとする原告の上記主張は、採用することができない」と述べている。 |