東京高裁(平成16年6月7日)“スズ-鉛電気メッキ溶液事件”は、「大和電機工業は、・・・・昭和59年8月18日以前に、中原化興から、試験に使用するサンプルとして、ソルダロンNFの譲渡を受けていたものと認めることができ、上記譲渡により、大和電機工業において、同製品を自由に分析することにより発明を技術的に理解し得る状態になったのであるところ、審判におけるBの証言・・・・によれば、上記譲渡の当時において、譲渡を受けたソルダロンNFのサンプルを分析してその成分を明らかにすることは容易であったと認められるから、他に反証のない限り、これにより同製品に係る発明は、日本国内において公然実施をされたものというべきである」、「被告は、上記譲渡について、ジャパンロナールは、それ以前の取引において、大和電機工業がサンプルを分析する意思のないことを承知していたものであり、顧客へのサンプル提供は、譲受人である当該顧客が、第三者に更に譲渡したり、分析を依頼したりすることまでも許容したものではなく、あくまでも、その者が製品の性能評価をするためのものであり、当時の業界慣行及び大和電機工業とジャパンロナールとの取引経緯を考慮すれば、サンプルを分析しないとの黙示の契約が締結されたと認めるのが相当というべきである・・・・と主張する。しかしながら、・・・・被告主張に係る業界慣行及び黙示の契約については、これを認めるに足りる証拠はないから、・・・・被告の上記主張は採用することができない」、「以上のとおり、本件優先日前の昭和59年8月18日以前に、ソルダロンNFに係る発明は、日本国内において公然実施をされたものというべきである」と述べている。 |