東京高裁(平成16年6月9日)“カラー写真用現像処理装置事件”は、「原告は、・・・・本願補正発明における『廃液回収タンクのpHが6.5−3.0の酸性領域に維持される』旨の数値限定は、アンモニアガスの発生が著しく抑制されるという顕著な作用効果を導いているのに、審決は、これを看過し、進歩性の判断を誤ったと主張する。しかし、引用例1には、・・・・廃液の『pHが略8.0以上ではアンモニア成分の揮発が大きくなる』として、アンモニアガスの発生を抑制するためにはpH値を下げた方がよいことが記載され、また、特開昭63−143991号公報・・・・には、写真処理廃液の処理方法及びその装置に関する発明の説明中に、『廃液(濃縮液)が一定のpH範囲にある限り、悪臭ガス成分の放出を抑制できる・・・・即ち、本発明によれば、濃縮液のpHが・・・・より好ましくは5.0〜7.0の範囲に維持されることにより、悪臭の抑制が可能となる』・・・・として、写真処理廃液からアンモニアガス等の悪臭が発生するのを防止するために、廃液のpHを7.0以下に抑えること、また、その場合pHを更に低くすれば更に悪臭の発生を防ぐことができることが記載されており、これらの記載によれば、原告が主張するようなアンモニアガスの発生と廃液pHとの関係は、周知事項ないし当業者の技術常識に属する事項と認められる。そうである以上、本願補正発明のように、アンモニアガスの発生を抑制するために、廃液回収タンクのpH範囲を6.5−3.0の酸性領域とすることは、当業者が適宜設定し得る設計的事項にすぎず、そのことによる作用効果も、周知の技術から当業者が予測できる範囲内のものというべきである。したがって、審決が、本願補正発明の顕著な作用効果を看過し、進歩性の判断を誤ったとする原告の主張は、理由がないというべきである」と述べている。 |