東京高裁(平成7年19日)“揺動斜板式圧縮機におけるピストン事件本件訂正bによる訂正後の本件訂正発明においては斜板の回転方向側及び反対側の少なくとも一方の片頭ピストンの頭部の周面側にはピストンの中心軸線側に向けて凹ませた肉取り部を設ける一方前記ピストンの中心軸線に関して斜板の半径方向側における片頭ピストンの頭部の周面部において往復動時に前記シリンダボアの内周面から押し付け力に対する反力を受けるようにしたとして肉取り部を『押し付けられる領域から外れた位置』に形成するとの要件が削除されたためその特許請求の範囲の文言上ピストンの中心軸線側に向けて凹ませた肉取り部が『押し付けられる領域』にまで及んで形成されることを排除しない規定となっているものである。したがって例えば斜板の回転方向側及び反対側の少なくとも一方の片頭ピストンの頭部の周面側に設けられた肉取り部が斜板の半径方向側におけるシリンダボアの内周面から押し付け力(f2に対する反力)を受ける部分にまで食い込んだ形で形成されたものは本件訂正前発明ではその構成要件である『肉取り部が・・・・押し付けられる領域から外れた位置に形成した』に該当しないものとしてその技術的範囲に含まれないのに対し『押し付けられる領域』には形成されないとの限定のない本件訂正発明においては、その技術的範囲に含まれ得ることになることが明らかである。そうすると、・・・・本件訂正bは、特許請求の範囲を拡張するものであることが明らかであって、・・・・『特許請求の範囲の減縮』を目的とするものとはいえず、また、・・・・『誤記の訂正』あるいは『明りょうでない記載の釈明』を目的としたものともいえないというべきである」と述べている。

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