知財高裁(平成17年10月11日)“水溶性ポリペプタイドのマイクロカプセル化事件”は、「本件特許発明は、・・・・酢酸ブセレリンを有効成分とするマイクロカプセルとして調整された医薬組成物に関するものである。そこで、平成10年12月25日に本件処分(第2処分)がされたが、その対象となった物は、『販売名 スプレキュア MP1.8(酢酸ブセレリン徐放性製剤)』であるところ、活性成分である酢酸ブセレリンを製剤化した品目であって、処分における『有効成分』は、酢酸ブセレリンであって、処分の対象となった『物』は酢酸ブセレリンであり、また、その『用途』は、子宮内膜症と、子宮筋腫の縮小及び子宮筋腫に基づく過多月経、下腹痛、腰痛、貧血の諸症状の改善であった。一方、酢酸ブセレリン製剤のスプレキュアにつき、点鼻液の剤型で昭和63年6月28日に子宮内膜症に対するものとして承認され、平成4年3月27日に子宮筋腫につき適応症追加承認となった」、「以上の事実関係によれば、確かに、酢酸ブセレリンを有効成分とするマイクロカプセルとして調整された医薬組成物という本件出願に係る特許発明の実施をすることができなかったとはいい得る。しかしながら、昭和63年6月28日には、酢酸ブセレリンを物(有効成分)とし、子宮内膜症及び子宮筋腫(後者については平成4年3月27日に追加承認)に対する用途(効能・効果)によって薬事法上の承認がされていたのであるから、本件特許発明の実施のために『物(有効成分)と用途(効能・効果)という観点から(第2の)本件処分を受けることが必要であった』ということができない。薬事法上の(第2の)処分が改めて必要であった理由は、物(有効成分)と用途(効能・効果)というレベルではなく、剤型を異にするからであるにすぎない。よって、本件出願が法67条の3(サイト注:現67条の7)第1項1号に該当するので、拒絶すべきものであるとした審決の判断は、是認し得るものである」と述べている。 |