知財高裁(平成17年11月11日)“偏光フィルムの製造法事件”は、「特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきもの・・・・と解するのが相当である」、「本件明細書の記載が、特許請求の範囲の本件請求項1の記載との関係で、・・・・明細書のサポート要件に適合するか否かについてみると、・・・・本件明細書の発明の詳細な説明には、・・・・本件請求項1に記載された構成・・・・を採用することの有効性を示すための具体例としては、・・・・実施例が2つと、・・・・比較例が2つ記載されているにすぎない。他方、本件発明は、・・・・本件出願時において、具体例の開示がなくとも当業者に理解できるものであったことを認めるに足りる証拠はない。また、・・・・上記4つの具体例のみをもって、・・・・所望の効果(性能)が得られる範囲を・・・・的確に裏付けているとは到底いうことができない。そうすると、本件明細書に接する当業者において、・・・・課題を解決し、・・・・所望の性能を有する偏光フィルムを製造し得ることが、上記4つの具体例により裏付けられていると認識することは、本件出願時の技術常識を参酌しても、不可能というべきであり、本件明細書の発明の詳細な説明におけるこのような記載だけでは、・・・・特許請求の範囲の本件請求項1の記載が、明細書のサポート要件に適合するということはできない」と述べている。 |