知財高裁(平成17年11月17日)“脂肪族ポリエステル二軸延伸フィルム事件”は、「PCC値とSRaとの関係につき、請求項1の不等式[PCC値≦7000−45000×SRa]を満足させることが、当業者に過度の試行錯誤を強いるものであるか否かについて判断する」、「滑剤粒子の平均粒子径が1.8μmである場合に限っては、実施例及び比較例の数値を参照することによって、不等式[PCC値≦7000−45000×SRa]を満足するフィルムを得ることは容易に実施することが可能であると考えられる。しかし、前記不等式によって表される範囲は、原告作成による参考図でいえば、『(1)式』と記載された右下がりの直線で区切られた下の部分全体を指すのに対し、平均粒子径が1.8μmである場合の実施範囲とは、比較例1、実施例3、実施例1、実施例2・・・・、比較例2の各プロットを順次結んだ線に近似する、右上がりの線であるのにすぎないのであって、このような限られた範囲の実施をもって、前記不等式によって表される数値範囲の実施をしたとは、到底評価できないものである。したがって、本件明細書の実施例を手がかりとしても、PCC値とSRaとの関係が不等式[PCC値≦7000−45000×SRa]を満足するフィルムを得るためには、製造されたフィルムにつきSRaとPCC値を逐一計測して、前記不等式を満たしているか否かを確認するほかないから、当業者に過度の試行錯誤を強いるものといわざるを得ない」、「以上のとおり、PCC値とSRaとの関係が不等式[PCC値≦7000−45000×SRa]を満足するものとすることは、当業者にとって実施可能であるとは認められない」と述べている。 |