東京地裁(平成7年2月7日)“図形表示装置事件、「課題を解決するための手段の欄には、・・・・本件特許発明1及び2の特許請求の範囲そのものが記載されているにすぎず、それ以上に、本件特許請求の範囲を説明する具体的な記述は全くない。本件明細書の大部分は、本件特許発明の実施例の説明が占めており、唯一の実施例が詳細に記載されている。そして、本件特許発明の特許請求の範囲の記載には『第1の読出信号』『第2の読出信号』『読出順序データ』など、それ自体語句として一義的に明確でない用語が含まれ、その図形の回転表示方法が一義的に明確であるとはいえないにもかかわらず、その点について唯一の実施例以外に十分な開示がされているとはいえない。すなわち、本件特許発明について、本件実施例以外の説明では、当業者がマップとキャラクタジェネレータとを用いて図形の回転表示を行うこと、すなわち本件特許発明を実施することができる程度に明確かつ十分に特許請求の範囲が説明されているとはいえない。したがって、本件特許発明の特許請求の範囲の記載を解釈するには、本件明細書に記載された唯一の実施例に記載されている回転表示方法を考慮して解釈せざるを得ないというべきである」、「原告は、実施例限定・・・・による限定解釈は許されない旨主張する。しかしながら、特許請求の範囲の記載が一義的に明確でなく、発明の詳細な説明にも、当該実施例以外に当業者が発明を実施することができる程度に明確かつ十分な説明がない場合には、当該特許は、無効とすべきか若しくは開示されていない技術思想を含まないよう開示の限度で独占的利益を与えられるにすぎないのであって、このことは、・・・・特許法の予定しているところといわざるを得ない」と述べている。

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