東京地裁(平成17年2月25日)“コンテンツ中継サービス装置事件”は、「特許権に基づく差止請求訴訟において、相手方の侵害の行為を組成した物又は方法を特定して主張することは、差止請求の対象として、審判の対象ないし訴訟物を特定することにより判決の既判力の客観的範囲を画定し、執行の対象を特定するために必要であるとともに、当該物又は方法が特許発明の技術的範囲に属するか否かを対比することにより、特許権侵害の成否を判断するために必要である。したがって、特許権に基づく差止請求訴訟を提起する者は、審判の対象ないし訴訟物及び執行の対象を特定するとともに、特許権侵害の成否を判断することができる程度に相手方の侵害の行為を組成した物又は方法を特定して主張しなければならない。そして、これを訴訟における相手方の防御活動の観点からみると、いかなる物又は方法が対象とされているのかが、社会通念上他と区別することができる程度に具体的に特定されていることを要するものである。特許法104条の2本文が『特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、特許権者又は専用実施権者が侵害の行為を組成したものとして主張する物又は方法の具体的態様を否認するときは、相手方は、自己の行為の具体的態様を明らかにしなければならない。』と規定するのも、相手方において、いかなる物又は方法が対象とされているのかが、社会通念上他と区別することができる程度に明らかにされれば、相手方の防御活動に支障はなく、相手方が積極的に自己の行為の具体的態様を明らかにすることにより、特許権侵害には当たらないことを主張することができることを前提にしているものと解される」と述べている。 |