名古屋地裁(平成17年4月28日)“移載装置事件”は、「特許法102条2項にいう『利益』とは、侵害者が特許権侵害に係る製品の製造、販売のみに要する専用の設備を新たに設置し、あるいは従業員を雇い入れたといった例外的な事情がない限り、侵害に係る製品の売上額から、原材料の仕入れ、加工、保管、運送等に要した経費のうち当該製品の製造、販売のみのために要した変動費を控除した限界利益をいう(もっとも、必ずしも財務会計上の限界利益と一致するものではない。)と解するのが相当である」、「被告は、人件費(総組立費)として573万円を控除すべき旨主張するところ・・・・前記の限界利益の考え方からは、特別の事情がない限り、組立に要する人件費、経費(旅費交通費、減価償却費、賃借料、修繕費、水道光熱費、電力費、消耗品費、リース料、燃料費、雑費)の全部が製造原価に含まれるものではなく、当該製品の製造のみのために要した部分に限り、売上げから控除すべきである・・・・。もっとも、被告においては、通常は残業がないにもかかわらず、受注した被告製品を製造するに際し、1日1人当たり2時間ないし4時間の残業をしたことが認められる・・・・ところ、これは、被告製品の製造のために特に要したものであって、原告が本件特許権に基づく製品を製造するためにも同程度の残業を要したものと認められるから、これに対する手当の支払については、変動経費として売上げから控除すべきものと判断する」、「被告は、管理費1104万4902円を控除すべき旨主張する。しかし、前記のとおり、控除すべき管理費は、侵害者が侵害品の製造、販売のために初めて追加的に要したものに限られるところ、被告の主張する上記管理費は、被告製品の売上高に一般管理費の製造原価に対する比率を乗じたものであるから・・・・、必ずしも製品の販売のために追加的に要したものとは認められない。したがって、被告の利益の計算に当たって、管理費を控除することはできない」と述べている。 |