大阪地裁(平成7年6日)“育毛剤事件使用者等は、職務発明について特許を受ける権利の承継を受けなくとも、法定の通常実施権を有するのであるから、従業者等が職務発明について特許を受ける権利を使用者等に承継させた場合に受けるべき相当な対価は、通常実施権を有する者が特許を受ける権利ひいては特許権を譲り受けることを前提としたものであるというべきである。したがって、使用者等が、その発明の実施によって利益を受けていても、そのうち、特許を受ける権利ひいては特許権を有していなくとも、法定の通常実施権を有していれば受けることのできる利益については、上記相当の対価の額を算定するにあたっては考慮すべきものではなく、使用者等が特許を受ける権利ひいては特許権を有することによって受けることのできる利益に限って考慮すべきものである」、「また、従業者等が、職務発明について特許を受ける権利を使用者等に承継させた場合には、その承継のときに、相当の対価の支払いを受ける権利を取得するものであるから・・・・、相当の対価の額の算定において基準とすべき時点は、その承継時であるというべきである。そして、また、相当の対価の算定に当たって考慮すべき、使用者等の『受けるべき利益』とは、その文言が『受けた利益』ではないことからも、使用者等が権利承継後に現実に手にした利益ではなく、権利承継時に客観的に見込まれる利益の額のことを指すと解される」と述べている。

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